海外事業比率を会社全体の71%までに育てたヤクルトの「理念」


ヤクルトの海外事業の現状


2015年時点での数字ではあるものの、

海外27事業所を中心に、日本を含む33の国と地域で「ヤクルト」を販売。


その販売本数は、海外で1日約2600万本以上、

国内を含めると全世界で毎日約3500万本に達している。

ヤクルトは、「ヤクルトレディ」での訪問販売方法にこだわり、

海外では、44,848人(国内36,536人)の

ヤクルトレディが活躍している。


ヤクルトは、国内飲料事業・海外飲料事業・医療品事業などがあり、

2016年3月期の数字では、売上高1584億8000万円で

その中で海外飲料事業は、全体の39%、

営業利益でいくと403億7700万円で、全体の71%を占めており、

ダントツでの稼ぎ頭となっているというからすごいものだ。



ヤクルトの海外展開の歴史


ヤクルトが海外展開をスタートしたのは1964年。

さすがは大企業。50年以上前に進出を開始している。

1980年代までに、

台湾、ブラジル、香港、タイ、韓国、フィリピン、シンガポール、メキシコ。

1990年代以降は、アメリカ、オランダ、ベルギー、イギリス、中国

近年では、インドでダノンとの合弁により

2008年1月よりインドヤクルト・ダノンとして営業開始。

ベトナムでも2007年9月から販売を行っていますが、

その特徴として、当時の時代背景を考えても、

発展途上国や新興国から進出を始めていることと、

日本と同様に、「ヤクルトレディ」を使った

地道な訪問販売を行っていること。



なぜ途上国や新興国なのか


海外、特に新興国において、ヤクルトの販売価格は決して安くない。

インドでは10ルピー(16.6円、2017年1月現在)程度で販売しているが、

ヤクルトよりも20%ほど容量が多い競合品が半額程度で販売されており、

同じ店で横に並んで置いてあるという状況。


インドに関していえば、少なくとも爆発的に売れているわけでもなく、

決して成功しているとはいえない。

普及するのには時間がかかるものとして、

4〜5年での黒字を最初から期待していないとはいえ、


一定の成功をおさえめたものの、序盤、散々失敗してきたフィリピンしかり、

ラテンアメリカでも苦労している。


10年20年スパンでビジネスとして

回収することを視野にいれているとしても、

なのに、なぜ、こういったマーケットに勝負するのか。

なぜ、文化も慣習も違うなか、

ヤクルトレディでの販売スタイルにこだわるのか。


海外事業が時間がかかる。継続が必要とはいえ、

10年以上かかることを覚悟して

最初からはうまくいかなくても、継続し続けさせるもの。




それが、


ヤクルトに浸透していた「理念」というものだ。


「必要とされる国」で勝負する


「予防医学」と「健腸長寿」

「誰もが手に入れられる価格で」をコンセプト(理念)として

作られているヤクルトは、

グローバル社会における課題の解決にも貢献できるもの。


地域環境問題の中で、一番大きな問題は「水」の問題であり、

特に途上国では、安全な飲料水がなかなか確保できずに下痢になる人や、

生死に関わる場合もあったり、子供が学校に行けなかったりと、

生活を破壊するほどの問題である。

このヤクルトは、この水問題という世界最大のニーズに対応していて、

生きて腸まで届く乳酸菌によって腸内環境をよくするため、

整腸効果が見込める点がウリとなる。


ところが、ヤクルトは、たまたま手に取って

週に1回だけ飲むというような飲み方では、

本来のヤクルトならではの良さや、

「予防医学」や「健腸長寿」の効果が実感できない。


その方法を伝えるためには、

「ヤクルトレディ」が欠かせない、というわけなのだ。


訪問販売が許されない国や安全が確保されない場合を除き、

訪問販売が可能な地域では、この方法を完徹している。


予防医学を世界に浸透させる、

それが必要とされている国こそ、

という

「なぜ」「何のために」

「その国・地域でビジネスをするのか」

「自社の提供する製品・サービス・技術を

本当に必要としている顧客、喜んでくれる顧客は、そこにいるのか」


という問いに明確に答えがあり、

確固たる軸を持っているからこそ、

成功している事例だということが、よくわかる。

理念こそ、海外ビジネスでは重要なのだ。



あなたの企業理念は何ですか?

シンプルに、明確に、答えられますか?

そして、それは、海外にも、必要とされているものですか?



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参考文献:「実践的グローバル・マーケティング」著者:大石芳裕

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Cross the World株式会社 代表のブログです。

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